外壁塗装の見積もりを見ていて、「高圧洗浄って本当に必要なの?」と
疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
「古い塗料を落とすだけなら、簡単な掃除でいいんじゃないか」
「高圧洗浄の費用を削れば、もっと安くなるかも」
そう考えるのは自然なことです。
実際、高圧洗浄を省いて費用を安く見せる業者も存在します。
私はこれまで、外壁塗装工事を自社で行うだけでなく、
他社施工後に「数年で剥がれてきた」「浮いてきた」と
相談を受け、補修に入るケースも数多く見てきました。
高圧洗浄は外壁塗装の成否を左右する最も重要な工程の一つです。
この記事の結論
外壁塗装において、高圧洗浄は原則として必須の工程です。
これを省略すると、塗料の密着不良が起きやすく、
数年で剥がれ・浮きが発生するリスクが高まります。
ただし、
- 外壁が脆弱な場合
- ひび割れが多い場合
- 目地(シーリング)が著しく劣化している場合
などは、高圧洗浄ではなく、手洗いや低圧洗浄を選ぶ方が適切なケースもあります。
重要なのは、
「高圧洗浄をやるか・やらないか」ではなく、
建物の状態を見たうえで、最適な洗浄方法を選べているかどうかです。
この記事では、次の点がわかります。
・高圧洗浄が外壁塗装で「省いてはいけない理由」
・洗浄を省かれた場合に、実際に起きやすいトラブル
・見積もりや工程表で確認すべき具体的なポイント
・高圧洗浄が適さないケースと、その正しい判断基準
・洗浄費用の相場と、注意すべき見積もり表記
なぜ高圧洗浄が必要なのか
外壁塗装における高圧洗浄の目的は、単なる「汚れ落とし」ではありません。
高圧洗浄で除去するもの
- 古い塗膜の劣化部分:チョーキング現象で粉状になった塗料
- コケ・カビ・藻:根を張っていることも多く、表面だけでは取れない
- サビや汚れ:雨だれ、排気ガス、花粉などの堆積物
- 脆弱な部分:既に剥がれかけている塗膜や浮いている箇所
これらが残ったまま塗装すると、新しい塗料が外壁にしっかり密着せず、
「塗料の下に汚れが残っている状態」になってしまいます。
塗料メーカーの指定工程
ほとんどの塗料メーカーは、施工マニュアルの中で「下地処理」として高圧洗浄を明記しています。
これを省略すると、メーカーの保証対象外になることもあります。
つまり、高圧洗浄は「やった方がいい」ではなく、
「やらなければ正しい塗装工事にならない」工程なのです。
高圧洗浄を省くとどうなるか
実際に私が補修に入った現場では、南面の出隅やサッシまわりなど、
汚れや劣化が残りやすい部分から塗膜が浮いてくるケースが非常に多いです。
実際に起きやすいトラブル
塗装後2〜3年で剥がれや浮きが発生
新築のようにきれいに仕上がったはずなのに、数年で一部が剥がれ始める。
特に日当たりの良い南面や、雨が当たりやすい部分から劣化が進みます。
コケ・カビが塗膜の下で再発
表面だけ塗っても、根が残っていれば塗膜の内側で成長します。
見た目にはわからなくても、内部から塗膜を押し上げて浮きの原因に。
塗料の密着不良による早期劣化
本来10年持つはずの塗料が、5年程度で光沢を失い、再塗装が必要になる。
結果的に、安く済ませたつもりが高くつくケースが大半です。
なぜ省く業者がいるのか
※ 注意してください
「高圧洗浄は不要です。その分安くできます」
と言われた場合は、
・なぜ不要なのか
・どの洗浄方法で代替するのか
・乾燥期間はどうなるのか
を必ず確認してください。
これらを説明できない場合、単なる工程省略の可能性があります。
高圧洗浄を省く理由は、ほとんどの場合「工期短縮」か「コスト削減」です。
高圧洗浄には、作業そのものに加えて乾燥期間(通常1〜2日)が必要になります。
なお、洗浄後の乾燥期間を含めた外壁塗装全体の工期については、
「外壁塗装の工期はどれくらい?」で工程別に詳しく整理しています。
これを省けば、見積もりを安く見せられるうえに、短期間で次の現場に移れる。
ただし、
後からトラブルが起きても「施工時の問題ではない」と言い逃れされることが多いのが実情です。
正しい高圧洗浄の見分け方
高圧洗浄が「ちゃんと行われているか」を見極めるポイントをお伝えします。
□ 高圧洗浄の項目が「一式」ではなく㎡単価で書かれている
□ 洗浄後の乾燥期間が工程表に明記されている
□ 洗浄方法(高圧/低圧/手洗い)の説明がある
□ 水圧について質問しても、具体的な回答が返ってくる
□ 洗浄後の状態を確認させてもらえる
※ 1つでも曖昧な場合は、必ず理由を確認しましょう。
見積もりでチェックすべき点
- 高圧洗浄の項目が明記されているか:「一式」ではなく㎡単価で記載されているか
- 洗浄後の乾燥期間が確保されているか:工程表に「乾燥」の記載があるか
- 水圧の確認:適切な水圧は10〜15MPa程度(高すぎても外壁を傷める)
もし見積書を見て「何となく違和感がある」と感じた場合は、
「外壁塗装の見積もりがおかしいと感じたら確認すべきポイント」の記事も判断材料になります。
もし見積書を見ていて「説明が足りない」「工程が省かれていそう」と感じた場合は、
同じ条件で複数社の見積もりを取り、内容を比較してみると判断しやすくなります。
営業を受ける前に、工程や洗浄方法を整理した見積書だけを確認できるサービスもあります。
施工中に確認すべきこと
- 十分な時間をかけているか:30坪程度の住宅なら、最低でも半日〜1日は必要
- 全面を均一に洗っているか:見えにくい北面や裏側も手を抜いていないか
- 洗浄後の状態を確認させてくれるか:「乾燥前に見せてください」と伝える
業者が嫌がるようなら、要注意です。
きちんとした施工をしている業者なら、むしろ洗浄後の状態を見てもらいたいはずです。
あなたが今もらっている見積もりには、ここまでの内容がきちんと反映されていますか?
高圧洗浄が適さないケースもある
ここまで高圧洗浄の重要性を説明してきましたが、
実はすべての外壁に高圧洗浄が適しているわけではありません。
| 外壁の種類 | 推奨される洗浄方法 | 注意点・補足 |
|---|---|---|
| 窯業系サイディング | 高圧洗浄(10〜15MPa) | 目地のシーリングが劣化している場合は事前補修が必要。水圧が高すぎると表面を傷めるケースもある |
| 金属サイディング | 低圧洗浄または手洗い | 高圧洗浄で塗膜や表面が傷つく可能性あり。錆がある場合はケレン作業(削り落とし)が別途必要 |
| モルタル壁 | 高圧洗浄が基本だが、ひび割れがある場合は手洗い | ひび割れから水が浸入すると内部を傷める。状態次第で低圧洗浄やブラッシングに切り替えるケースが多い |
| ALC(軽量気泡コンクリート) | 低圧洗浄または手洗い | 吸水性が高いため、高圧洗浄は内部浸水のリスクあり。目地や継ぎ目の状態確認が重要 |
| 築30年以上の住宅 | 手洗い・ブラッシングが安全 | 外壁材自体が脆弱なケースが多い。高圧洗浄で外壁が傷むリスクがあるため、慎重な判断が必要 |
※実際の洗浄方法は、外壁の劣化状況によって判断されます。
手洗いやブラッシングが推奨される場合
モルタル壁でひび割れが多い場合
高圧の水が隙間に入り込み、内部の木材や断熱材を傷める可能性があります。
この場合は手洗いとブラッシングで丁寧に洗浄します。
サイディングの目地が劣化している場合
シーリング(コーキング)が劣化していると、水が内部に浸入します。
洗浄前にシーリングの打ち替えが必要です。
築年数が古く、外壁自体が脆弱な場合
高圧洗浄の水圧で外壁材そのものが傷むリスクがあります。
状態を見ながら、低圧洗浄や手洗いに切り替える判断が必要です。
重要なのは「外壁の状態に合わせた判断」
画一的に「高圧洗浄すればOK」ではなく、建物の状態を見て適切な方法を選ぶ。
これができる業者かどうかが、信頼できるかどうかの分かれ目です。
【高圧洗浄して大丈夫?簡易チェック】
外壁塗装を検討する際、高圧洗浄が適しているかどうかは、建物の状態によって変わります。
以下の2つの質問に答えることで、おおよその判断目安がわかります。
Q1. 外壁にひび割れ(クラック)はありますか?
【YESの場合】
ひび割れがある場合、高圧洗浄の水が隙間から内部に浸入し、
断熱材や木部を傷める可能性があります。
特に幅0.3mm以上のひび割れがある場合は注意が必要です。
この場合、次の質問に進んでください。
【NOの場合】
外壁表面に目立ったひび割れがない場合は、高圧洗浄が適しているケースが多いです。
ただし、目地(シーリング)の状態も確認が必要なため、次の質問に進んでください。
Q2. サイディングの目地(シーリング)にひび割れや剥がれはありますか?
【YESの場合(Q1もYESだった方)】
ひび割れと目地劣化の両方がある場合、高圧洗浄は避け、
手洗いやブラッシングでの洗浄を検討するケースが多いです。
洗浄前にひび割れ補修とシーリングの打ち替えを行うことで、
その後に高圧洗浄が可能になる場合もあります。
【YESの場合(Q1はNOだった方)】
外壁本体にひび割れはないものの、目地が劣化している場合は、
シーリングの打ち替えを先に行う必要があります。
打ち替え後であれば、高圧洗浄が可能になるケースが一般的です。
【NOの場合(Q1もNOだった方)】
外壁のひび割れも目地の劣化も見られない場合、高圧洗浄が適している可能性が高いです。
ただし、築年数が古い建物や、外壁材が脆弱になっている場合は低圧洗浄や手洗いが推奨されることもあります。
【NOの場合(Q1はYESだった方)】
外壁にひび割れはあるものの、目地は健全な状態です。
この場合、ひび割れの補修後に高圧洗浄を行うか、
最初から低圧洗浄や手洗いで対応するかを業者と相談するケースが多いです。
※実際の判断は、外壁の劣化状況や建物の構造によって変わるため、最終的には現地確認が必要です。
高圧洗浄の費用相場
高圧洗浄の一般的な費用目安をお伝えします。
なお、高圧洗浄を含めた外壁塗装全体の費用相場と内訳については、
「外壁塗装の費用相場はいくら?」で整理しています。
相場の目安
- ㎡単価:150円〜300円/㎡
- 30坪の住宅(外壁面積約120㎡):18,000円〜36,000円程度
安すぎる・高すぎるケース
異常に安い(50円/㎡など)
作業時間を大幅に短縮している可能性が高い。
表面だけ濡らして「洗浄しました」というケースも。
異常に高い(500円/㎡以上)
特殊な薬剤を使う場合などを除き、通常の高圧洗浄でこの価格は考えにくい。
他の項目に費用が上乗せされている可能性があります。
「一式表記」には要注意
見積もりに「高圧洗浄一式 ○○円」と書かれている場合、面積や作業内容が不透明です。
必ず「何㎡を、どの程度の時間をかけて洗浄するのか」を確認してください。
相見積もりを取る際も、この点を比較することで、業者の姿勢が見えてきます。
工程が省かれやすいポイントは、高圧洗浄だけではありません。
実際に現場で起きている“省略されやすい工程”については、
「三度塗りは本当に必要?外壁塗装の闇」で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 高圧洗浄は自分でできますか?
家庭用の高圧洗浄機でも表面の汚れは落とせますが、塗装前の下地処理としては不十分です。
業務用の機材と経験が必要になるため、プロに任せることをおすすめします。
Q. 洗浄後、どれくらい乾燥させる必要がありますか?
通常は1〜2日が目安です。天候や湿度によっても変わります。
乾燥が不十分だと塗料の密着が悪くなるため、焦らず待つことが大切です。
Q. 高圧洗浄で外壁が傷むことはありませんか?
適切な水圧と技術があれば問題ありません。
ただし、既にひび割れがある場合や外壁が脆弱な場合は、事前に業者と相談が必要です。
Q. 洗浄だけ別の業者に頼むことはできますか?
可能ですが、あまりおすすめしません。
塗装業者は洗浄の仕上がりを見て次の工程を判断するため、一貫して任せた方が責任の所在も明確です。
Q. 見積もりに高圧洗浄が入っていない場合は?
必ず理由を確認してください。「手洗いで対応」などの説明があれば問題ありませんが、
単に省略されている場合は要注意です。
まとめ
高圧洗浄は、外壁塗装において省いてはいけない重要な工程です。
これを省略すると、塗料の密着不良が起き、数年で剥がれや浮きが発生するリスクが高まります。
ただし、建物の状態によっては高圧洗浄が適さないケースもあるため、
外壁の状態を見て適切な方法を選べる業者を選ぶことが大切です。
見積もりの段階で、高圧洗浄の項目がきちんと記載されているか、
工程表に乾燥期間が確保されているかを確認してください。
「安くするために省きましょう」と提案してくる業者には、注意が必要です。
外壁塗装は決して安い買い物ではありません。
だからこそ、必要な工程を正しく行ってくれる業者を選ぶことが、
長い目で見たときの満足につながります。
最終的には、必要な工程を省かず、
理由をきちんと説明できる業者かどうかが重要です。
業者選びの判断基準については、
「外壁塗装業者の正しい選び方|失敗しない判断基準」で詳しくまとめています。
最後に|家族で共有してください
建築会社を経営してきた立場から、最近特に感じていることがあります。
私は建築会社の経営者として、「工事が終わった瞬間」ではなく、
「数年後にどうなっているか」まで含めて責任を持つべきだと考えています。
悪徳業者の手口は年々巧妙になっており、「高圧洗浄は不要です、その分安くできます」といった甘い言葉で近づいてくるケースが増えています。
特に高齢のご両親や祖父母が一人で判断される場合、
「安くなるなら」と省略を承諾してしまうことも少なくありません。
外壁塗装は、家を守るための大切な工事です。
一人で判断せず、ご家族で情報を共有し、
複数の業者から見積もりを取って比較することをおすすめします。
必要な工程を省かず、誠実に施工してくれる業者は必ずいます。
焦らず、納得できるまで検討してください。
この記事が、あなたとご家族の判断材料の一つになれば幸いです。


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