結論|契約書は「サインする前」に隅々まで確認する
外壁塗装の契約書にサインする前に、必ず内容を隅々まで確認してください。
私は建築会社の経営者として、これまで何百件以上もの外壁塗装工事に携わってきましたが、
同時に「契約書をよく読まずにサインして後悔した」という相談も数多く受けてきました。
その多くは、契約書の内容を十分に理解せず、業者の説明を鵜呑みにしてサインしてしまったことが原因でした。
契約書は、あなたと業者の約束を明文化したものです。後でトラブルになったとき、
契約書に書かれていないことは「言った言わない」の水掛け論になります。
逆に、契約書に明記されていれば、それが証拠になります。
契約書にサインするということは、その内容に同意するということ。
一度サインしてしまえば、後から「知らなかった」は通用しません。
この記事では、外壁塗装の契約書で必ず確認すべき項目と、
トラブルを防ぐためのポイントを、現場の立場から正直にお伝えします。
悪徳業者の具体的な手口については、
「外壁塗装の悪徳業者の見分け方|実際の手口と対処法」
で詳しく解説しています。
契約書で必ず確認すべき10項目
契約書には、以下の10項目が明記されているかを必ず確認してください。
① 工事内容の詳細
何をどこまで施工するのかが、具体的に書かれているかを確認します。
確認すべき内容:
- 施工箇所(外壁、屋根、付帯部など)
- 施工範囲(全面か、一部か)
- 施工方法(下塗り・中塗り・上塗りの3工程が明記されているか)
- 使用塗料(メーカー名・商品名)
- 塗装面積(㎡)
注意点
「外壁塗装一式」とだけ書かれている契約書は要注意です。
「一式」では、何が含まれて何が含まれていないのか不明確です。
例えば、雨樋や破風の塗装が含まれているのか、含まれていないのか。
シーリングの打ち替えは含まれるのか、補修だけなのか。こうした細かい点が曖昧だと、
後で「それは含まれていません」と言われる可能性があります。
② 使用する塗料の詳細
どの塗料を使うのか、具体的に書かれているかを確認します。
確認すべき内容:
- メーカー名(日本ペイント、エスケー化研など)
- 商品名(ファインシリコンフレッシュ、など)
- 塗料のグレード(シリコン、フッ素など)
- 色番号(RAL番号など)
注意点
「シリコン塗料」「高耐久塗料」とだけ書かれていて、
具体的な商品名がない契約書は注意が必要です。同じシリコン塗料でも、
品質や価格は大きく異なります。
商品名が明記されていれば、後で「違う塗料が使われている」というトラブルを防げます。
また、自分でネットで調べて、本当にその塗料が適切なのか確認することもできます。
見積書の段階で塗料や工事内容を確認することも非常に重要です。
「外壁塗装の見積書の見方|項目ごとの正しい読み解き方」
で、チェックポイントを詳しく解説しています。
③ 工事金額と支払い条件
総額と、支払いのタイミング・方法が明記されているかを確認します。
確認すべき内容:
- 工事総額(税込み)
- 内訳(足場、塗装、付帯部など)
- 支払いタイミング(着手金・中間金・完成金)
- 支払い方法(現金、振込、クレジットなど)
- 振込先(銀行名・支店名・口座番号・名義)
一般的な支払いパターン
- 着手金(工事前):30%
- 中間金(工事中):30%
- 完成金(完了後):40%
または
- 着手金(工事前):なし
- 完成金(完了後):100%
注意点
全額前払いを要求する業者は要注意です。
お金を受け取った後、工事が雑になったり、連絡が取れなくなったりするリスクがあります。
理想的なのは、完成後に全額支払う、または完成後の支払いが大部分を占める形です。
完成後に支払いが残っていれば、仕上がりに不満があったときに交渉の余地があります。
④ 工事期間(工期)
いつから始まり、いつ完成するのかが明記されているかを確認します。
確認すべき内容:
- 着工日
- 完成予定日
- 工事日数
注意点
天候によって工期が延びることは珍しくありません。
契約書に「天候により延期する場合がある」といった文言があるかも確認してください。
ただし、あまりに長期間延期されるのも問題です。
「天候不良の場合、○日まで延期可能」といった上限が設定されていると安心です。
⑤ 追加費用の取り扱い
予定外の補修が必要になった場合、どう対応するのかを確認します。
確認すべき内容:
- 追加工事が発生する場合の対応
- 追加費用の見積もり提示の有無
- 施主の承諾なしに追加工事を進めないことの明記
理想的な記載例
「追加工事が必要になった場合は、事前に見積もりを提示し、施主の承諾を得てから施工する。
承諾なしに施工した追加工事の費用は請求しない。」
注意点
追加費用について何も書かれていない契約書は危険です。
後から「ここも補修が必要だった」と次々に追加請求される可能性があります。
実際、当初80万円で契約したのに、工事が始まると追加工事を次々と提案され、
最終的に200万円以上になったというケースもあります。
外壁塗装で追加費用が発生しやすい理由については、
「外壁塗装の費用が高くなる理由|価格差が出る仕組みを解説」
でも詳しく説明しています。
⑥ 保証内容
どんな保証があるのか、詳細に書かれているかを確認します。
確認すべき内容:
- 保証期間(何年か)
- 保証範囲(何が保証されるか、されないか)
- 保証条件(定期点検が必要か、など)
- 保証の内容(無償補修か、有償か)
- 保証書の発行時期
注意点
「10年保証」と口頭で言われても、契約書に明記されていなければ意味がありません。
また、保証期間だけでなく、保証範囲と条件も重要です。
外壁塗装の保証については、
「外壁塗装の保証内容|何年?どこまで保証される?」
で、年数と条件の違いを詳しく解説しています。
⑦ キャンセル・解約条件
契約後にキャンセルする場合、どうなるのかを確認します。
確認すべき内容:
- クーリングオフの説明(訪問販売の場合、8日以内は無条件解約可能)
- クーリングオフ期間後のキャンセル条件
- キャンセル料(発生する場合、その金額や計算方法)
- 着手後のキャンセル条件
注意点
訪問販売で契約した場合、法律で8日以内のクーリングオフが認められています。
この説明がない契約書は、法律違反の可能性があります。
また、着手後でもキャンセルできるのか、
その場合の費用はどうなるのかも確認しておくと安心です。
⑧ 瑕疵担保責任(契約不適合責任)
施工後に不具合が見つかった場合、どう対応するのかを確認します。
確認すべき内容:
- 瑕疵(施工不良)が見つかった場合の対応
- 無償補修の期間
- 対応方法(補修、やり直し、返金など)
理想的な記載例
「施工不良による不具合が発生した場合、引き渡しから○年以内であれば無償で補修する。」
注意点
この項目がない契約書は、後で不具合が見つかっても「保証期間外です」と言われる可能性があります。
⑨ 損害賠償・保険
工事中に事故が起きた場合、誰が責任を負うのかを確認します。
確認すべき内容:
- 工事中の事故(隣家への損害、車への傷など)の責任
- 損害保険への加入状況
- 保険でカバーされる範囲
注意点
足場が倒れて隣家の車を傷つけた、塗料が飛散して隣家の外壁を汚した、といった事故が起きた場合、誰が責任を負うのか。業者が損害賠償保険に加入していれば、保険でカバーされます。
加入していない業者の場合、トラブル時に「それは施主の責任です」と言われる可能性もあります。
⑩ 契約書の発行者情報
業者の情報が正確に記載されているかを確認します。
確認すべき内容:
- 会社名(正式名称)
- 代表者名
- 所在地
- 連絡先(固定電話、携帯電話)
- 建設業許可番号(該当する場合)
- 印鑑(社印または代表者印)
注意点
携帯電話番号しかない、所在地が不明確、といった業者は、
後で連絡が取れなくなるリスクがあります。
固定電話と事務所の所在地が明記されている業者を選びましょう。
契約書で見逃しやすい注意ポイント
以下のような記載がある場合は、特に注意が必要です。
「一式」表記が多い
「外壁塗装一式」「付帯部塗装一式」など、「一式」ばかりの契約書は、
何が含まれているのか不明確です。
対処法
- 「一式の中身を具体的に教えてください」と質問する
- 別紙で内訳を作成してもらう
小さな文字で書かれた条項
契約書の末尾に、小さな文字で重要な条項が書かれていることがあります。
よくある内容
- 「天候不良による延期は無制限とする」
- 「追加工事が発生した場合、施主は拒否できない」
- 「完成後のクレームは一切受け付けない」
対処法
- 隅から隅まで読む
- 分からない文言は必ず質問する
空欄がある
契約書に空欄があると、後から業者が都合の良い内容を書き込む可能性があります。
対処法
- 空欄には斜線を引く
- すべての項目が埋まっていることを確認する
口頭での約束が記載されていない
「口頭で『○○します』と言われたのに、契約書には書かれていない」というケースは非常に多いです。
対処法
- 口頭での約束も、必ず契約書に明記してもらう
- 「契約書に書かれていないことは約束されていない」と考える
契約前にやるべき5つのこと
契約書にサインする前に、以下のことを必ず行ってください。
① 契約書を持ち帰る
その場でサインを求められても、「家族と相談してから」と言って持ち帰ってください。
誠実な業者であれば、快く応じてくれます。
「今日サインしないと契約できない」と言う業者は、避けた方が無難です。
② 家族と一緒に確認する
一人で読んでも、見落としがあるかもしれません。
配偶者や子ども、兄弟姉妹など、家族と一緒に確認してください。
二人で読めば、一人では気づかなかった違和感に気づけます。
③ 分からない言葉を調べる
専門用語や法律用語が出てきたら、ネットで調べるか、業者に質問してください。
「なんとなく」で理解したつもりにならず、完全に理解してからサインしてください。
④ 見積書と照らし合わせる
契約書の内容が、見積書と一致しているかを確認してください。
- 金額は同じか
- 工事内容は同じか
- 使用塗料は同じか
見積もりの段階で確認することも大切です。
「外壁塗装の見積もりがおかしいと感じたら確認すべきポイント」で、
見積書のチェック方法を解説しています。
⑤ 不明点は必ず質問する
「こんなこと聞いたら失礼かな」と思わず、分からないことは何でも質問してください。
誠実な業者であれば、どんな質問にも丁寧に答えてくれます。
質問をはぐらかしたり、「細かいことは気にしなくていいですよ」と言ったりする業者は、
注意が必要です。
実際にあった契約書トラブル事例
私が実際に見聞きした、契約書に関するトラブル事例をご紹介します。
事例①:追加費用を次々と請求された
状況
当初80万円で契約したが、工事が始まると
「ここも補修が必要」「これは別料金」と次々に追加請求され、最終的に150万円になった。
原因
契約書に「追加工事が発生した場合の対応」が明記されておらず、「必要な補修は別途請求する」とだけ書かれていた。
教訓
追加費用について、「事前に見積もりを提示し、承諾を得る」という文言が必要。
事例②:口約束が守られなかった
状況
「雨樋も塗装します」と口頭で言われたのに、実際には塗装されなかった。
業者に確認したら「契約書には書いていない」と言われた。
原因
口頭での約束を契約書に明記していなかった。
教訓
口頭での約束も、必ず契約書に明記してもらう。
記載されていないことは「約束されていない」と考える。
事例③:業者と連絡が取れなくなった
状況
工事完了後、塗膜の剥がれが発生したので業者に連絡したが、電話がつながらない。
契約書を見たら、携帯電話番号しか書かれていなかった。
原因
業者の固定電話や事務所の所在地を確認していなかった。
教訓
契約書には、固定電話と事務所の所在地が明記されている業者を選ぶ。
携帯電話のみの業者は避ける。
事例④:保証が受けられなかった
状況
「10年保証」と聞いていたのに、5年後に不具合が出て連絡したら「保証書には5年と書いてある」と言われた。
原因
口頭で「10年」と言われたのを鵜呑みにし、契約書と保証書を確認していなかった。
教訓
口頭での説明を鵜呑みにせず、必ず契約書と保証書で確認する。
クーリングオフについて
訪問販売で契約した場合、8日以内であればクーリングオフ(無条件解約)ができます。
クーリングオフの条件
- 訪問販売での契約(飛び込み訪問、電話勧誘など)
- 契約書を受け取った日から8日以内
- 自分から店舗に出向いて契約した場合は対象外
クーリングオフの方法
- 書面(ハガキまたは内容証明郵便)で通知
- 契約年月日、契約内容、契約金額を記載
- 「契約を解除します」と明記
- 郵便局で記録が残る方法で送る(簡易書留または内容証明)
注意点
- 8日を過ぎると難しくなる
- 工事が始まっていても解約できる
- 業者が「できない」と言っても、法律上の権利なので可能
- クーリングオフの説明がない契約書は法律違反
クーリングオフ期間を過ぎてしまった場合
消費生活センター(188)に相談してください。状況によっては、解約交渉や減額交渉の方法をアドバイスしてもらえます。
契約後に気づいたときの対処法
契約書にサインした後で、「内容がおかしい」と気づいた場合の対処法です。
① すぐに業者に連絡する
気づいた時点で、すぐに業者に連絡してください。
「契約書のこの部分について、説明してください」と伝えます。
② 消費生活センターに相談する
業者の説明に納得できない、または連絡が取れない場合は、消費生活センター(188)に相談してください。
③ 契約書の修正を依頼する
明らかな記載ミスや、口頭で約束した内容が抜けている場合は、契約書の修正を依頼してください。
双方が合意すれば、契約書を修正することは可能です。
修正した場合は、修正箇所に双方が押印します。
④ クーリングオフを検討する
訪問販売で契約していて、8日以内であれば、クーリングオフを検討してください。
⑤ 弁護士に相談する
高額な契約で、業者が悪質な場合は、弁護士に相談することも検討してください。
初回相談無料の法律事務所も多いです。
信頼できる業者の契約書の特徴
誠実な業者の契約書には、以下のような特徴があります。
- すべての項目が具体的に記載されている
- 「一式」表記が少なく、内訳が明確
- 追加費用の取り扱いが明記されている
- 保証内容が詳細に書かれている
- クーリングオフの説明がある
- 固定電話と事務所の所在地が明記されている
- 専門用語に説明がついている、または分かりやすい言葉で書かれている
逆に、以下のような契約書は要注意です。
- 「一式」ばかりで内訳が不明
- 空欄が多い
- 小さな文字で重要な条項が書かれている
- 追加費用について何も書かれていない
- クーリングオフの説明がない
- 携帯電話番号しかない
業者選びの基準については、
「外壁塗装業者の正しい選び方|失敗しない判断基準」で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 契約書を持ち帰りたいと言ったら、業者が渋りました。これは普通ですか?
A. いいえ、普通ではありません。誠実な業者であれば、「じっくり検討してください」「ご家族に相談してください」と言ってくれます。持ち帰りを渋る業者は、何か後ろめたいことがあるか、冷静に検討されると困る理由があるのかもしれません。
Q. 契約書と見積書、どちらが優先されますか?
A. 契約書が優先されます。見積書は「案」であり、契約書が正式な約束です。見積書と契約書の内容が違う場合は、必ず確認してください。
Q. 契約書に印鑑を押しましたが、まだお金は払っていません。キャンセルできますか?
A. 訪問販売であれば、8日以内ならクーリングオフが可能です。それ以外の場合は、契約書のキャンセル条項を確認してください。お金を払っていなくても、契約は成立しています。
その他の疑問については、
「外壁塗装のよくある質問(FAQ)|疑問をまとめて解決」も参考にしてください。
まとめ|契約書は最後の砦
契約書で確認すべきポイントをまとめます。
契約前から工事完了までの全体チェックについては、
「外壁塗装で後悔しないためのチェックポイント」
にまとめています。
必ず確認すべき10項目
- 工事内容の詳細
- 使用する塗料の詳細
- 工事金額と支払い条件
- 工事期間(工期)
- 追加費用の取り扱い
- 保証内容
- キャンセル・解約条件
- 瑕疵担保責任
- 損害賠償・保険
- 契約書の発行者情報
契約前にやるべきこと
- 契約書を持ち帰る
- 家族と一緒に確認する
- 分からない言葉を調べる
- 見積書と照らし合わせる
- 不明点は必ず質問する
契約書の鉄則
- 「一式」表記ばかりの契約書は要注意
- 口頭での約束は必ず契約書に明記
- 分からないことは納得できるまで質問
- その場でサインせず、必ず持ち帰る
- 8日以内ならクーリングオフが可能(訪問販売の場合)
最後に|一人で判断しないでください
契約書は、法律用語や専門用語が並び、一人で読むには難しいものです。
分からなくて当然ですし、一人で判断する必要はありません。
もし契約書を受け取ったら、必ず家族に見せてください。
配偶者、子ども、兄弟姉妹、誰でも構いません。
「この契約書、どう思う?」と聞くだけでも、冷静な視点が加わります。
特に、高齢のご両親や祖父母が契約を検討している場合は、
必ず家族が一緒に確認してあげてください。
「迷惑をかけたくない」と一人で決めてしまい、
後で大きなトラブルになるケースは本当に多いのです。
自分の判断に自信が持てない場合や、第三者の意見を聞いてから決めたい場合は、
複数の業者に状況を見てもらうという選択肢もあります。
複数社の契約書を見比べることで、
「この業者の契約書は詳しいけど、この業者は曖昧だな」という違いに気づけるはずです。
そして、少しでも不安があれば、消費生活センター(188)に相談してください。
契約前の相談も受け付けています。
「この契約書、おかしくないですか?」と聞くだけでも、判断材料になります。
契約書にサインするということは、その内容に同意するということ。
一度サインしてしまえば、後から「知らなかった」は通用しません。
だからこそ、サインする前に、隅々まで確認してください。分からないことは、
納得できるまで質問してください。急いでサインする必要はありません。
この記事が、一人でも多くの方に届き、外壁塗装で後悔する人が減ることを、心から願っています。
正しい情報をもとに、納得のいく判断をしてください。
そして、不安なときは一人で抱え込まず、必ず誰かに相談してください。
あなたとご家族が、安心して外壁塗装を終えられることを願っています。


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