結論|火災保険は「経年劣化」には使えない「自然災害」なら可能性がある
外壁塗装に火災保険が使えるかどうかについて、まず結論をお伝えします。
- 外壁塗装すべてに火災保険が使えるわけではない
- 自然災害による損傷であれば、保険が適用される可能性がある
- 経年劣化・通常のメンテナンスは対象外
- 「保険が必ず使える」と断言する業者には注意が必要
私は建築会社の経営者として、これまで何百件もの外壁塗装工事に携わってきましたが、
同時に「保険が使えると言われて契約したのに、実際には使えなかった」というトラブル相談も数多く受けてきました。
火災保険は、あくまで「予期せぬ自然災害による損傷」を補償するものです。
通常の経年劣化や、定期的なメンテナンスには使えません。
この記事では、火災保険が使えるケース・使えないケースを明確に分け、正しい申請方法、
そして保険を利用する際の注意点を、現場の立場から正直にお伝えします。
大切なのは、「保険が使えるかどうか」ではなく「本当に今、外壁塗装が必要かどうか」を冷静に判断することです。
火災保険が使えるケース・使えないケース
まず、どんな場合に火災保険が使えるのか、使えないのかを明確にしましょう。
火災保険が使える可能性があるケース
火災保険は、「予期せぬ自然災害による損傷」を補償します。
外壁塗装に関連する例としては、以下があります。
① 台風による飛来物で外壁が破損
台風で飛んできた看板や枝が外壁にぶつかり、ひび割れや破損が生じた場合、
風災として保険が適用される可能性があります。
② 強風で雨樋・破風板が破損
強風で雨樋が外れた、破風板が破損した、といった場合も、
風災として保険が適用される可能性があります。
③ 雹(ひょう)による外壁・屋根の損傷
雹が降って外壁や屋根に凹みや傷が生じた場合、雹災として保険が適用される可能性があります。
④ 雪の重みで雨樋や屋根が破損
雪の重みで雨樋が曲がった、屋根が破損した、といった場合、
雪災として保険が適用される可能性があります。
⑤ 落雷による損傷
落雷で外壁や屋根が損傷した場合、落雷による損害として保険が適用される可能性があります。
火災保険が使えないケース
以下のような場合は、火災保険の対象外です。
① 経年劣化
時間の経過とともに自然に劣化したひび割れ、塗膜の剥がれ、色あせなどは、保険の対象外です。
外壁塗装のほとんどは、この「経年劣化」によるものです。
10年、15年と経過すれば、塗膜は劣化します。
これは自然な現象であり、保険で補償されるものではありません。
② 施工不良
前回の塗装工事が不十分だったために、早期に塗膜が剥がれたり、
ひび割れが生じたりした場合も、保険の対象外です。これは、前回の施工業者の責任です。
③ 地震による損傷
地震で外壁にひび割れが生じた場合、火災保険ではなく「地震保険」の対象になります。
火災保険だけでは、地震による損傷は補償されません。
④ 定期的なメンテナンス
「そろそろ塗装時期だから」「10年経ったから」といった、定期的なメンテナンスは保険の対象外です。
⑤ 小さな損傷
保険契約によっては、免責金額(自己負担額)が設定されています。
損害額が免責金額以下の場合、保険金は支払われません。
判断が難しいグレーゾーン
実際には、「これは自然災害による損傷なのか、経年劣化なのか」の判断が難しいケースもあります。
例えば:
- 台風の後にひび割れが見つかったが、以前からあった可能性もある
- 強風で雨樋が外れたが、経年劣化で固定が緩んでいた可能性もある
こうしたグレーゾーンは、保険会社の判断に委ねられます。
業者が「これは保険が使える」と言っても、最終的に判断するのは保険会社です。
実際に多い誤解・トラブル事例
火災保険を巡るトラブルは、実際に非常に多いです。よくある事例を見ていきましょう。
トラブル①:「保険で無料で直せます」と言われた
事例
訪問営業の業者が「お宅の外壁は、火災保険で無料で直せます。今すぐ申請しましょう」と言ってきた。言われるがままに契約したが、実際には保険が下りず、全額自己負担になった。
問題点
保険が適用されるかどうかは、保険会社が判断します。業者が「必ず使える」と断言することはできません。
また、「無料で直せる」という言葉は、保険金が全額出ることを前提にしていますが、
実際には免責金額があったり、一部しか認められなかったりすることもあります。
教訓
「保険で無料」と断言する業者は、避けた方が無難です。
誠実な業者であれば、「保険が使える可能性はありますが、最終的には保険会社の判断になります」と説明してくれます。
こうした業者の見極め方については、
「保険を理由に契約を急がせる業者の共通点」
でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
トラブル②:経年劣化を「台風被害」として申請させられた
事例
業者に「台風で外壁が傷んだことにして、保険を申請しましょう」と勧められた。
言われるがままに申請したが、保険会社の調査で経年劣化と判断され、保険金は下りなかった。
さらに、虚偽申請として保険会社から警告を受けた。
問題点
経年劣化を自然災害として申請するのは、虚偽申請です。
これは保険金詐欺に該当する可能性があり、非常に危険です。
保険会社は、専門の調査員を派遣して損傷の原因を調べます。
虚偽申請は必ず見抜かれますし、虚偽申請と判断された場合、
保険金が支払われないだけでなく、
契約の見直しや注意・警告の対象になることがあります。
悪質なケースでは、法的な問題に発展する可能性もあるため、
絶対に行わないでください。
教訓
業者から「経年劣化だけど、台風被害ということにしましょう」と勧められても、
絶対に応じないでください。これは違法行為です。
トラブル③:保険金が想定より少なかった
事例
業者の見積もりでは「150万円かかります。保険で全額出るので安心してください」と言われた。実際に保険金が下りたのは50万円だけで、残り100万円は自己負担になった。
問題点
保険会社が認める金額と、業者の見積もり金額が一致するとは限りません。
保険会社は、必要最低限の補修費用しか認めないことが多いです。
また、業者の見積もりに不要な工事が含まれている場合、その部分は保険で認められません。
教訓
保険金がいくら出るかは、保険会社が決めます。
業者の見積もり金額が全額出ると考えるのは危険です。
トラブル④:契約後に「保険が下りなかったので全額自己負担」
事例
「保険が使える」と言われて契約したが、実際には保険が下りなかった。
業者に問い合わせたら「保険が下りなくても、契約は有効です。全額お支払いください」と言われた。
問題点
契約書に「保険適用が前提」という条件が明記されていなければ、保険が下りなくても契約は有効です。
業者によっては、「保険が下りなかった場合はキャンセル可能」という特約を付けてくれることもありますが、多くの場合、そうした配慮はありません。
教訓
保険を前提に契約する場合は、「保険が下りなかった場合の取り扱い」を契約書で明確にしておくことが重要です。
保険を前提に契約する場合は、
「保険が下りなかった場合の取り扱いが書かれているか」
を必ず確認してください。
正しい申請の流れ(ステップ形式)
火災保険を使って外壁塗装をする場合、正しい手順を踏むことが重要です。
ステップ①:損傷の原因を確認する
まず、外壁の損傷が「自然災害によるものか、経年劣化か」を確認します。
確認方法
- いつから損傷があったか思い出す
- 台風や雹など、自然災害の記憶があるか
- 写真があれば、日付を確認する
経年劣化であることが明らかな場合は、保険申請はできません。無理に申請すると、虚偽申請になります。
ステップ②:保険会社に連絡する
損傷が自然災害によるものと思われる場合、まず保険会社に連絡します。
伝える内容
- いつ、どんな災害があったか(台風、雹など)
- どこが、どのように損傷したか
- 写真があれば送る
保険会社から、必要な書類や手続きについて説明があります。
注意点
業者が「私たちが保険会社とやり取りします」と言っても、申請の主体はあなた(施主)です。
業者に任せきりにせず、自分で保険会社とやり取りすることをお勧めします。
ステップ③:保険会社の調査を受ける
保険会社は、専門の調査員(アジャスター)を派遣して、損傷の原因と程度を調査します。
調査内容
- 損傷箇所の確認
- 損傷の原因の特定(自然災害か、経年劣化か)
- 補修に必要な費用の算定
調査員の判断が、保険金支払いの可否を決めます。
注意点
調査員の質問には、正直に答えてください。
「いつから損傷があったか分からない」「もしかしたら以前からあったかもしれない」といった
曖昧な部分は、正直に伝えてください。
嘘をつくと、虚偽申請になります。
ステップ④:保険会社の判断を待つ
調査後、保険会社が「保険金を支払うか、いくら支払うか」を判断します。
判断の結果
- 承認:保険金が支払われる
- 一部承認:一部のみ保険金が支払われる
- 否認:保険金は支払われない
否認された場合、理由が説明されます。
経年劣化と判断された、損害額が免責金額以下だった、などです。
ステップ⑤:保険金を受け取る
承認された場合、保険金が振り込まれます。
注意点
保険金は、あなた(施主)の口座に振り込まれます。
業者の口座に直接振り込まれることはありません。
保険金を受け取った後、どう使うかはあなたの自由です。
必ずしも外壁塗装に使う必要はありません(ただし、損傷を放置すると、次回の保険申請が難しくなる可能性はあります)
ステップ⑥:業者を選び、工事を依頼する
保険金が下りたら、業者を選んで工事を依頼します。
重要なポイント
保険金が下りる前に契約してはいけません。保険金がいくら出るか分からない段階で契約すると、
想定より少ない金額しか出なかった場合に、差額を自己負担することになります。
また、保険金が下りたからといって、焦って業者を決める必要はありません。
複数社から見積もりを取り、比較してから決めてください。
保険金が下りたからといって、すぐに業者を決める必要はありません。
「保険を前提にせず、工事内容と説明を比較する視点」
を持つことが重要です。
保険を利用する際の注意点
火災保険を利用して外壁塗装をする場合、以下の点に注意してください。
注意点①:業者が勝手に申請を進めない
申請の主体は、あなた(施主)です。業者ではありません。
業者が「私たちが全部やります。委任状にサインしてください」と言ってきても、安易に応じないでください。
委任状にサインすると、業者があなたの代わりに保険会社とやり取りできるようになります。
これにより、あなたの知らないところで話が進んだり、
不利な条件で承諾されたりするリスクがあります。
注意点②:「保険が使える」を前提に契約しない
保険が使えるかどうかは、保険会社が判断します。
業者が「必ず使える」と言っても、信じないでください。
保険が下りることを前提に契約すると、下りなかった場合に全額自己負担になります。
保険申請をしてから、結果が出てから、業者を選ぶ順番が安全です。
注意点③:保険金額と工事費用の差を確認する
保険金が50万円しか下りなかったのに、
工事費用が150万円かかる場合、差額の100万円は自己負担です。
保険金だけでは足りない場合、どうするかを事前に考えておいてください。
- 差額を自己負担する
- 保険金の範囲内で補修する
- 工事を見送る
いずれも選択肢です。無理に工事をする必要はありません。
注意点④:虚偽申請は絶対にしない
経年劣化を自然災害として申請するのは、虚偽申請です。絶対にやめてください。
虚偽申請は、保険金詐欺に該当します。
保険契約が解除されたり、刑事告訴されたりする可能性があります。
業者から「経年劣化だけど、台風被害ということにしましょう」と勧められても、絶対に応じないでください。
注意点⑤:保険金は施主の口座に振り込まれる
保険金は、あなたの口座に振り込まれます。業者の口座に直接振り込まれることはありません。
「保険金を直接受け取ります」と言う業者は、信用しないでください。
保険金を受け取った後、業者に支払うのはあなたです。
保険金を受け取る前に全額支払いを要求する業者も、避けた方が無難です。
「保険が使える」と言う業者の見極め方
「火災保険が使えますよ」と勧めてくる業者には、誠実な業者と、そうでない業者がいます。
誠実な業者の特徴
- 「保険が使える可能性はありますが、最終的には保険会社の判断になります」と説明する
- 経年劣化と自然災害の違いを丁寧に説明する
- 虚偽申請を勧めない
- 保険が下りなかった場合の対応も説明する
- 保険申請をあなた(施主)が行うことを前提に話す
注意すべき業者の特徴
- 「必ず保険が使えます」と断言する
- 「無料で直せます」と強調する
- 「私たちが全部やります」と言う
- 経年劣化を自然災害として申請するよう勧める
- 保険が下りる前に契約を急かす
- 委任状への署名を強く求める
こうした業者には注意が必要です。保険を利用する場合でも、業者選びは慎重に行ってください。
複数の業者に相談し、説明内容や姿勢を比較することで、誠実な業者を見極めやすくなります。
判断材料を集めるために、複数社の意見を聞くという選択肢も検討してみてください。
火災保険が関わる外壁塗装は、説明の仕方や考え方に業者ごとの差が出やすい分野です。
一社の説明だけで判断せず、複数の業者の意見を聞いて比較することで、
「本当に保険の対象になるのか」「工事が必要かどうか」を冷静に判断しやすくなります。
判断材料を集める目的で、
「外壁塗装の見積もりを複数社から取り寄せて比較する」
という方法も一つの選択肢です。
火災保険と助成金・補助金の違い
火災保険と混同されやすいのが、助成金・補助金です。これらは別のものです。
火災保険
- 自然災害による損傷を補償
- 自分で加入している保険
- 申請は自分(施主)が行う
- 保険会社が判断する
助成金・補助金
- 省エネ改修などに対して自治体が支援
- 条件を満たせば誰でも申請できる
- 申請は自分(施主)が行う
- 自治体が判断する
助成金・補助金については、別の機会に詳しく解説していますが、
火災保険とは別の制度であることを理解してください。
保険を使わない場合の選択肢
火災保険が使えない場合、または使わない場合でも、外壁塗装は可能です。
選択肢①:自己資金で行う
最も一般的なのは、自己資金で行う方法です。
費用感が分からないまま判断すると、保険金額と工事費用の差に戸惑いやすくなります。
見積もり金額だけでなく、工事内容や必要性を含めて総合的に検討してください。
選択肢②:助成金・補助金を利用する
自治体によっては、外壁塗装に助成金・補助金を出している場合があります。
条件や金額は自治体によって異なるため、確認してみてください。
選択肢③:ローン・分割払いを利用する
一度に大きな金額を用意できない場合、ローンや分割払いを利用する方法もあります。
金利や手数料を確認してから検討してください。
選択肢④:工事を延期する
劣化が軽度であれば、数年延期することも選択肢です。無理に今やる必要はありません。
ただし、劣化を放置すると、後でより高額な補修が必要になることもあります。
バランスを考えて判断してください。
よくある質問
Q. 火災保険を使うと、保険料が上がりますか?
A. 火災保険は、自動車保険と違い、一般的には使っても保険料が上がらないとされています。
ただし、契約内容や保険会社の方針によって扱いが異なる場合もあるため、
詳細は加入している保険会社に確認してください。
Q. 保険が下りなかった場合、再申請できますか?
A. 一度否認されたものを、同じ理由で再申請することは難しいです。ただし、新たな自然災害で損傷が生じた場合は、再度申請できます。
Q. 業者が「保険申請のサポートをします」と言っていますが、任せても大丈夫ですか?
A. サポート内容によります。「必要書類の準備を手伝います」「写真の撮り方をアドバイスします」といったサポートは問題ありません。しかし、「私たちが保険会社とやり取りします」「委任状にサインしてください」といった場合は注意が必要です。申請の主体はあなたであるべきです。
Q. 保険金が下りたら、必ず工事をしなければいけませんか?
A. いいえ、必須ではありません。保険金の使い道は自由です。ただし、損傷を放置すると、次回の保険申請が難しくなる可能性はあります。
Q. 経年劣化と自然災害の損傷、どう見分ければいいですか?
A. 素人には判断が難しいこともあります。迷ったら、保険会社に相談してください。保険会社の調査員が専門的に判断してくれます。
まとめ|保険はあくまで「手段の一つ」、冷静な判断を
火災保険について、重要なポイントをまとめます。
火災保険が使えるケース
- 台風・強風・雹・雪・落雷などの自然災害による損傷
- 予期せぬ事故による損傷
火災保険が使えないケース
- 経年劣化
- 施工不良
- 地震による損傷(地震保険が必要)
- 定期的なメンテナンス
申請の流れ
- 損傷の原因を確認する
- 保険会社に連絡する
- 保険会社の調査を受ける
- 保険会社の判断を待つ
- 保険金を受け取る
- 業者を選び、工事を依頼する
注意点
- 業者が勝手に申請を進めない
- 「保険が使える」を前提に契約しない
- 虚偽申請は絶対にしない
- 保険金は施主の口座に振り込まれる
- 「必ず使える」と断言する業者に注意
最後に|一人で判断せず、複数の意見を聞いてください
火災保険は、自然災害による損傷があった場合に役立つ制度です。
しかし、すべての外壁塗装に使えるわけではありません。
大切なのは、「保険が使えるかどうか」ではなく、
「本当に今、外壁塗装が必要かどうか」を冷静に判断することです。
業者から「保険で無料で直せますよ」と言われても、その言葉を鵜呑みにせず、
以下を確認してください。
- 本当に自然災害による損傷なのか
- 経年劣化ではないのか
- 保険会社はどう判断するのか
- 保険が下りなかった場合、どうするのか
そして、一人で判断しないでください。
保険会社に相談し、家族に相談し、必要であれば複数の業者に意見を聞いてください。
特に、訪問営業で「保険が使える」と勧められた場合は、即決せず、
必ず家族や第三者に相談してください。
高齢のご両親や祖父母が同様の勧誘を受けている場合も、必ず家族で情報を共有してください。
火災保険は、あくまで「手段の一つ」です。それ自体が目的ではありません。
家を守るために本当に必要な工事かどうかを、冷静に判断してください。
複数の業者から意見を聞き、工事内容や説明の丁寧さを比較することで、
より納得のいく判断ができます。
判断材料を集めるために、複数社に相談するという選択肢も検討してみてください。
この記事が、一人でも多くの方に届き、外壁塗装で後悔する人が減ることを、心から願っています。
正しい情報をもとに、納得のいく判断をしてください。
そして、不安なときは一人で抱え込まず、必ず誰かに相談してください。
あなたとご家族が、安心して外壁塗装を終えられることを願っています。


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