外壁塗装の見積もりを見ていて、「下塗り」という項目に不思議な名前が並んでいませんか。
「シーラー」「フィラー」「プライマー」
同じ下塗りなのに、なぜ名前が違うのか。 どれが良くて、どれが悪いのか。
「結局、業者の言いなりになるしかないのか」
そう感じている方も多いはずです。
建築会社を経営してきた立場から言わせていただくと、
下塗り材の選択は外壁塗装の中で最も誤解されやすく、最もトラブルにつながりやすい工程です。
なぜなら、下塗りは仕上がった後には見えない部分だからです。
結論:下塗り材は「名前」より「役割」で選ぶ
外壁塗装の下塗り材は、
シーラー・フィラー・プライマーなど外壁の状態や素材に合わせて使い分ける必要があります。
名称が違うから性能が良い・悪いのではなく、「どの外壁に、どの目的で使うか」が重要です。
下塗り材を誤ったり、一律で使い回したりすると、
塗料の密着不良や早期剥がれにつながるため注意が必要です。
「三度塗りだから安心」この考え方だけで判断するのは、リスクがあると言えます。
三度塗りという言葉が、どこまで本当に意味を持つのかについては、
「三度塗りは本当に必要?外壁塗装の闇」で現場目線で整理しています。
大切なのは、外壁の状態に合った下塗り材を選んでいるかどうか。
この記事では、それぞれの下塗り材の役割と選び方を、現場経験をもとに解説します。
そもそも下塗りとは何をする工程?
外壁塗装は「下塗り・中塗り・上塗り」の三度塗りが基本です。
その最初の工程である下塗りには、仕上がりを左右する重要な役割があります。
下塗りの3つの役割
外壁と上塗り塗料を密着させる
外壁材と塗料は素材が異なるため、そのまま塗っても剥がれやすくなります。
下塗り材が接着剤のように間に入ることで、塗料がしっかり定着します。
外壁の吸い込みを調整する
劣化した外壁は塗料を過剰に吸い込んでしまい、仕上がりにムラが出ます。
下塗り材で吸い込みを抑えることで、上塗りが均一に仕上がります。
下地の凹凸やひび割れを整える
細かいひび割れや表面の凹凸を埋めることで、仕上がりが美しくなります。
ひび割れを放置すると、そこから塗膜が裂けて劣化が進みます。
下塗り材の説明をきちんとしてくれるかどうかは、業者選びの判断材料にもなります。
塗料や下塗り材の説明力も含めた業者比較のポイントについては、
[外壁塗装業者を比較するときに見るべき5項目]で詳しくまとめています。
下塗りを軽視した場合に起きやすいトラブル
現場を見てきた経験から言うと、下塗りの手抜きは後から必ず表れます。
塗装後2〜3年で剥がれや浮きが発生
下塗りが不十分だと、塗料が外壁にしっかり密着しません。
特に雨が当たりやすい部分や日当たりの良い南面から劣化が始まります。
仕上がりにムラが出る
吸い込みが調整されていないと、塗料が均一に乗りません。
光の当たり方で色の濃淡が見えてしまうケースもあります。
ひび割れが再発する
下地処理が不十分だと、塗膜の下でひび割れが進行します。
表面はきれいでも、数年後に同じ場所が割れることがあります。
見えない工程ほど差が出る
下塗りは、完成後には見えません。
だからこそ、手抜きをしても施主にはすぐにはわからない。
業者の技術力と誠実さが、最も現れる工程だと言えます。
シーラーとは?使われる場面と特徴
シーラーは、下塗り材の中で最も一般的に使われるものです。
シーラーの役割
外壁の吸い込みを止める
劣化した外壁は塗料を過剰に吸い込むため、シーラーで表面を固めます。
「吸い込み止め」とも呼ばれる機能です。
上塗り塗料との密着性を高める
外壁材と塗料を接着させる役割があります。
液状でサラサラしており、外壁に浸透して密着力を高めます。
シーラーが向いている外壁
- サイディング外壁で劣化が軽度な場合
- モルタル壁で吸い込みが激しい場合
- 塗り替え回数が少ない外壁
- 表面が比較的平滑で、大きなひび割れがない外壁に適しています。
シーラーが向いていないケース
- ひび割れが多いモルタル壁
- 表面に凹凸が目立つ外壁
- 金属サイディングやトタン
シーラーは塗膜が薄いため、ひび割れを埋める効果はほとんどありません。
「とりあえずシーラー」は危険
現場を見ていて感じるのは、「すべての外壁にシーラーを使う」業者の存在です。
シーラーは比較的安価で乾燥も早いため、コストと工期を削減できます。
しかし、ひび割れが多い外壁にシーラーだけでは不十分です。
外壁の状態を見ずに「いつもシーラーです」という説明しかできない業者は、注意が必要です。
フィラーとは?ひび割れ補修との関係
フィラーは、シーラーよりも厚みのある下塗り材です。
フィラーの役割
ひび割れを埋める
0.3mm程度までのひび割れなら、フィラーで埋めることができます。
特にモルタル壁のような「動きやすい外壁」に有効です。
表面の凹凸を平滑にする
外壁の細かい凹凸を埋めて、仕上がりを美しくします。
シーラーよりも粘度が高く、ペースト状をしています。
フィラーが使われる場面
- モルタル壁でひび割れが多い場合
- 外壁表面に凹凸がある場合 築年数が古く、下地調整が必要な場合
フィラーは「微弾性フィラー」と呼ばれることもあり、外壁の動きに追従する柔軟性を持っています。
厚塗りの意味と注意点
フィラーは厚く塗ることで効果を発揮しますが、厚すぎると乾燥不良の原因になります。
乾燥には1〜2日かかるため、工期も長くなります。
また、シーラーより高価なため、見積もりも高くなる傾向があります。
フィラーは万能ではない
ひび割れを埋められるといっても、0.5mm以上の大きなひび割れには対応できません。
その場合は、Vカット工法などの別の補修が必要になります。
フィラーを使えば「どんなひび割れも大丈夫」というわけではありません。
プライマーとは?シーラーとの違い
プライマーという名称も、見積もりでよく見かけます。
プライマーの役割
密着性に特化した下塗り材
金属面や特殊な外壁材に塗料を密着させるために使います。
シーラーと役割は似ていますが、より専門的な用途に使われます。
錆止め効果を持つものもある
金属サイディングやトタン屋根には、錆止めプライマーが使われます。
錆の発生を防ぎ、塗膜の寿命を延ばします。
プライマーが使われる場面
- 金属サイディングやトタン屋根
- 既に錆が発生している部分
- 特殊な上塗り塗料を使う場合
一般的な窯業系サイディングやモルタル壁では、
プライマーよりシーラーやフィラーが使われることが多いです。
シーラーとの違い
正直に言うと、シーラーとプライマーは「ほぼ同じもの」として扱われることもあります。
メーカーによって呼び方が違ったり、用途によって使い分けたりします。
ただし、金属面や錆止めが必要な場合は「プライマー」と明記されることが多いです。
名称が混乱しやすい理由
建築業界では、メーカーや地域によって呼び方が統一されていません。
「浸透性シーラー」「シーラープライマー」「微弾性フィラー」など、
組み合わせた名称も存在します。
大切なのは、名称ではなく「何を目的に使うのか」を業者が説明できるかどうかです。
【早見表】下塗り材の違いまとめ
| 下塗り材の種類 | 主な役割・使う場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| シーラー | 吸い込み止め・密着性向上。サイディングや劣化が軽度な外壁に使用 | 塗膜が薄く、ひび割れを埋める効果はほとんどない。凹凸がある外壁には不向き |
| フィラー | ひび割れ・凹凸を埋める。モルタル壁や劣化が進んだ外壁に使用 | 乾燥に1〜2日かかる。大きなひび割れ(0.5mm以上)には別途補修が必要 |
| プライマー | 密着性に特化。金属面や特殊下地に使用。錆止め効果を持つものもある | 用途が限定的。一般的な外壁ではシーラーやフィラーが選ばれることが多い |
※実際の選択は、外壁材の種類と劣化状況を見て判断されます。
下塗り材を説明しない業者が注意な理由
見積もりを受け取ったとき、下塗り材について詳しく説明してくれる業者とそうでない業者がいます。
「いつもこれです」という説明の危うさ
建築会社の経営者として、現場を見てきた経験から言えることがあります。
外壁の状態を見ずに「いつもシーラーを使っています」こうした説明の場合は、
注意して確認した方がよいでしょう。
外壁材も劣化状況も違うのに、一律で同じ下塗り材を使うのは不自然です。
きちんとした業者なら、
「この外壁はひび割れが多いのでフィラーを使います」と理由を説明してくれます。
見積書に材料名がないケースの注意点
「下塗り一式 ○○円」としか書かれていない見積もりは、内容が不透明です。
何を使うのか どのメーカーの製品か 外壁ごとに使い分けるのか
これらが明記されていない場合、
後から「安い材料に変更された」というトラブルも起こり得ます。
見積書の内容に違和感を覚えた場合は、
どこを確認すべきかを
「外壁塗装の見積もりがおかしいと感じたら確認すべきポイント」でまとめています。
説明できるかどうかが判断軸
「なぜこの下塗り材を選んだのですか?」
この質問に答えられない業者は、知識不足か、深く考えずに見積もりを作っている可能性があります。
逆に、外壁の状態を見て理由を説明してくれる業者は、信頼できる判断材料になります。
下塗り材の費用相場と見積もりの注意点
下塗り材の費用について、一般的な目安をお伝えします。
材料費の考え方(㎡単価)
シーラー:600円〜900円/㎡ フィラー:900円〜1,500円/㎡ プライマー:700円〜1,200円/㎡
外壁面積120㎡(30坪程度の住宅)なら、下塗り材だけで72,000円〜180,000円程度が目安です。
材料費だけでなく、人件費や乾燥時間も費用に影響します。
安すぎる場合の注意
㎡単価が400円以下など、異常に安い場合は注意が必要です。
- 下塗り材を規定より薄めて使っている
- 安価な材料に変更している
- 下塗りの工程そのものを省略している
こうした可能性があります。
下塗りは見えない部分だからこそ、適正な費用がかかるものです。
一式表記への注意
「下塗り一式」と書かれているだけでは、何をどれだけ使うのかわかりません。
必ず、下塗り材の種類とメーカー名、そして面積を確認してください。
相見積もりを取る際も、この点を比較することで業者の透明性が見えてきます。
下塗りを含めた外壁塗装全体の費用相場については、
「外壁塗装の費用相場はいくら?」で内訳を含めて整理しています。
よくある質問
Q. 下塗り材は施主が指定できますか?
できます。
ただし、外壁の状態を見ずに指定すると逆効果になることもあります。
業者と相談しながら決めることをおすすめします。
Q. 外壁ごとに下塗り材を変える必要はありますか?
あります。
サイディングとモルタルでは適した下塗り材が異なりますし、
同じ外壁材でも劣化状況によって使い分けることがあります。
Q. 下塗りが省略されることはありますか?
下塗りが省略されるケースは、一般的には多くありません。
ごく稀に「下塗り不要」を謳う塗料もありますが、
一般的な外壁塗装では原則として必要な工程です。省略を提案する業者は要注意です。
Q. 下塗り材のメーカーは重要ですか?
重要です。
「日本ペイント」「関西ペイント」「エスケー化研」などの
大手メーカーは品質が安定しています。
聞いたことのないメーカーの場合は事前に調べることをおすすめします。
Q. 下塗りは何回塗るのが正しいですか?
通常は1回ですが、吸い込みが激しい場合や劣化が進んでいる場合は2回塗りすることもあります。
回数よりも、外壁の状態に合った判断ができているかが重要です。
まとめ
外壁塗装の下塗り材は、
シーラー・フィラー・プライマーなど
外壁の状態や素材に合わせて使い分ける必要があります。
名称が違うから性能が良い・悪いのではなく、
「どの外壁に、どの目的で使うか」が重要です。
下塗り材を誤ったり、
一律で使い回したりすると、
塗料の密着不良や早期剥がれにつながるため注意が必要です。
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建築会社を経営してきた立場から、最近特に感じていることがあります。
下塗り材のような専門用語が多い工程は、一般の方には非常に判断しづらい部分です。
「シーラー」「フィラー」「プライマー」という言葉だけで、何が違うのか、どれが正しいのか、わからなくなるのは当然のことです。
だからこそ、悪徳業者は「どうせわからないだろう」と、
外壁の状態に合わない下塗り材を使ってコストを削減します。
特に高齢のご両親や祖父母が一人で業者と話を進めている場合、
専門用語に圧倒されて「お任せします」と言ってしまうことも少なくありません。
外壁塗装は、家を長く守るための大切な投資です。
一人で判断せず、ご家族で見積もりの内容を確認し、
わからない点は納得できるまで質問することをおすすめします。
「なぜこの下塗り材を選んだのか」を明確に説明してくれる業者は必ずいます。
焦らず、複数の業者から見積もりを取って比較してください。
この記事が、あなたとご家族の判断材料の一つになれば幸いです。


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