結論|否認理由を確認し、納得できなければ再調査を依頼できる
火災保険の申請が否認されたとき、多くの方が「もう諦めるしかない」と思いがちです。
しかし、必ずしもそうではありません。
- 否認理由を正確に理解することが第一歩
- 理由に納得できなければ、再調査や異議申し立てができる
- ただし、経年劣化と判断されたものを覆すのは難しい
- 虚偽申請や不正な再申請は絶対にしてはいけない
私は建築会社の経営者として、
これまで多くの施主の方から「保険が下りなかった」という相談を受けてきました。
その中には、本当に経年劣化で仕方がなかったケースもあれば、
もう少し詳しく説明すれば認められた可能性があるケースもありました。
この記事では、火災保険が使えないと言われたときに、どう対処すればいいのか、
何ができて何ができないのかを、現場の立場から正直にお伝えします。
大切なのは、焦らず、冷静に、正しい手順を踏むことです。
まず確認すべきこと:否認理由を正確に理解する
保険会社から「保険金は支払えません」という通知が来たら、まず否認理由を確認してください。
火災保険が下りない(否認)主な理由
火災保険が認められない理由として、以下のようなものがあります。
① 経年劣化と判断された
最も多い否認理由です。
損傷が時間の経過による自然な劣化と判断された場合、保険の対象外です。
- 塗膜の剥がれ
- 色あせ
- ひび割れ(構造に影響のない小さなもの)
- コーキングの劣化
これらは、通常10〜15年で自然に発生するものであり、保険では補償されません。
② 損害額が免責金額以下だった
保険契約によっては、免責金額(自己負担額)が設定されています。
例えば、免責金額が10万円の契約で、損害額が8万円と査定された場合、保険金は支払われません。
③ 損傷の原因が特定できなかった
「いつ、どの災害で損傷したのか」が明確でない場合、保険会社は判断できません。
- 「去年の台風だと思うが、確証はない」
- 「以前からあったかもしれない」
こうした曖昧な状況では、保険金が認められにくくなります。
④ 保険の対象外の原因だった
- 地震による損傷(火災保険では対象外、地震保険が必要)
- 施工不良による早期劣化
- 人為的な損傷
こうした場合も、火災保険の対象外です。
⑤ 申請期限を過ぎていた
火災保険の請求権は、原則として損害発生から3年で時効になります(保険法の規定)。
ただし災害規模や契約内容で例外的な扱いになる場合もあるため、
早めに保険会社へ確認してください。
否認理由の確認方法
保険会社からの通知書には、否認理由が記載されています。
もし不明確な場合は、保険会社に電話で確認してください。
- 「なぜ経年劣化と判断されたのか」
- 「調査員はどこを見て判断したのか」
- 「損害額がいくらと査定されたのか」
こうした具体的な情報を得ることで、次の対処法が見えてきます。
対処法①:否認理由に納得できない場合は再調査を依頼する
写真・災害日・被害の前後関係を出せるなら、再調査の価値があります。
再調査を依頼できるケース
以下のような場合、再調査を依頼する価値があります。
① 明らかに台風で損傷したのに、経年劣化と判断された
例えば、台風直後に雨樋が外れたのに、「経年劣化」と判断された場合、
再調査を依頼してみてください。
- 台風の日付と被害状況を明確に伝える
- 台風前の写真があれば提出する
- 近隣でも同様の被害があったことを伝える
② 調査が不十分だったと思われる
調査員が現地に来たものの、損傷箇所をよく見ずに帰ってしまったように感じた場合、
再調査を依頼できます。
- 「この部分も見てほしかった」
- 「屋根には上がっていなかった」
こうした具体的な指摘をすることで、再調査が認められることがあります。
③ 損害額の査定が低すぎると感じる
保険会社の査定額と、業者の見積もり額に大きな差がある場合、再査定を依頼できます。
ただし、業者の見積もりに不要な工事が含まれている可能性もあるため、
一概に保険会社が間違っているとは限りません。
再調査の依頼方法
再調査を依頼する場合は、保険会社に電話またはメールで連絡します。
伝えるべき内容
- なぜ納得できないのか(具体的に)
- 追加で提出できる証拠があるか(写真、近隣の被害状況など)
- どの部分を再度調査してほしいか
感情的にならず、冷静に、具体的に伝えることが大切です。
再調査の結果
再調査の結果、判断が変わることもあれば、変わらないこともあります。
再調査でも「経年劣化」と判断された場合は、残念ながら諦めざるを得ません。
これ以上無理に覆そうとすると、不正申請になるリスクがあります。
対処法②:異議申し立て(苦情申し立て)をする
社内窓口で整理したうえで、解決しないときにADRを使う、が基本ルートです。
再調査を経ても納得できない場合、保険会社に正式な異議申し立てをすることができます。
異議申し立ての方法
保険会社には、「お客様相談室」や「苦情受付窓口」があります。
ここに連絡し、正式に異議を申し立てます。
異議申し立てに必要な情報
- 契約番号
- 申請内容
- 否認理由
- なぜ納得できないのか(具体的に)
- 証拠資料(写真、気象データなど)
保険会社は、異議申し立てを受けると、再度社内で検討します。
場合によっては、別の調査員を派遣することもあります。
そんぽADRセンターへの相談
保険会社との話し合いで解決しない場合、
「そんぽADRセンター(損害保険相談・紛争解決サポートセンター)」に
相談することもできます。
そんぽADRセンターとは
- 一般社団法人日本損害保険協会が運営
- 保険に関するトラブルの相談・解決をサポート
- 無料で利用できる
そんぽADRセンター(損害保険相談・紛争解決サポートセンター)
ナビダイヤル:0570-022808
IP電話等:03-4332-5241
受付:平日9:15〜17:00(年末年始等除く)
ただし、ADRセンターはあくまで中立的な立場であり、
必ずしもあなたの主張が認められるわけではありません。
写真や被害状況の整理が難しい場合は、
まず見積もりと被害の整理だけ先に進めると判断が楽です。
対処法③:別の証拠を集めて再申請する
新しい証拠が増えた場合のみが原則です。同じ内容の出し直しは避けましょう。
一度否認されても、新たな証拠が見つかれば、再申請できる可能性があります。
追加で集められる証拠
以下のような証拠があれば、再申請が認められやすくなります。
① 災害時の写真
台風や雹の直後に撮影した写真があれば、非常に有力な証拠になります。
- 損傷直後の外壁の写真
- 台風で飛んできた飛来物の写真
- 近隣の被害状況の写真
② 気象データ
気象庁のホームページで、過去の気象データを確認できます。
- 台風の日付と風速
- 雹が降った記録
- 大雪の記録
こうしたデータを提出することで、「確かにその時期に自然災害があった」ことを証明できます。
③ 近隣の被害状況
同じ時期に、近隣の家でも同様の被害があったことを証明できれば、
自然災害による損傷と認められやすくなります。
- 近隣住民の証言
- 自治体の被害報告
④ 業者の意見書
外壁塗装の専門業者に、「この損傷は経年劣化ではなく、自然災害によるもの」という意見書を書いてもらうことも有効です。
ただし、業者によっては「保険が使える」と言いたいがために、
不正確な意見書を書くこともあります。信頼できる業者に依頼してください。
再申請の注意点
再申請は、新たな証拠がある場合のみ
一度否認されたものを、同じ内容で再申請することはできません。
新たな証拠や、見落とされていた情報がある場合に限り、再申請が可能です。
虚偽の証拠を提出してはいけない
「台風の日に撮った」と偽って、後日撮影した写真を提出する、といった行為は絶対にしてはいけません。
これは保険金詐欺です。
やってはいけないこと
火災保険が下りなかったときに、絶対にやってはいけないことがあります。
NG①:経年劣化を自然災害として再申請する
保険会社に「経年劣化」と判断されたものを、「台風で損傷した」と言い換えて再申請するのは、虚偽申請です。
重大なケースでは刑事責任を問われる可能性もあります。
NG②:証拠を捏造する
- 台風の日ではない日の写真を「台風当日」と偽る
- 自分で損傷を加えて「台風で壊れた」と主張する
- 他の家の被害写真を「自分の家」として提出する
虚偽申請は調査で発覚する可能性が高く、
契約解除や返還請求、刑事責任など重大なリスクがあります。
NG③:業者に「何とかして保険を通してください」と依頼する
業者に「保険が下りるように、何とかしてください」と依頼すると、
業者が不正な申請をする可能性があります。
誠実な業者であれば、「経年劣化なので、保険は難しいです」と正直に言ってくれます。
「任せてください、何とかします」と言う業者は、
不正を働く可能性があるため、注意が必要です。
保険が使えなかった場合の選択肢
火災保険が使えなかった場合でも、外壁塗装は可能です。以下の選択肢があります。
選択肢①:自己資金で行う
最も一般的なのは、自己資金で外壁塗装を行う方法です。
予算が厳しい場合は、以下の方法を検討してください。
- 塗料のグレードを下げる
- 外壁と屋根を同時ではなく、別々にする
- 補修範囲を必要最低限にする
自己負担になった場合でも、金額と内容のブレを減らすために同条件で相見積もりは必須です。
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選択肢②:助成金・補助金を利用する
自治体によっては、外壁塗装に助成金や補助金を出している場合があります。
条件や金額は自治体によって異なるため、お住まいの自治体に確認してみてください。
選択肢③:ローン・分割払いを利用する
一度に大きな金額を用意できない場合、リフォームローンや分割払いを利用する方法もあります。金利や手数料を確認してから検討してください。
選択肢④:工事を延期する
劣化が軽度であれば、数年延期することも選択肢です。
ただし、劣化を放置すると、後でより高額な補修が必要になることもあります。
複数の業者に状況を見てもらい、
「今やるべきか、数年待てるか」を判断することをお勧めします。
相見積もりの取り方については、
詳しく解説していますので、参考にしてください。
保険が使えなくても焦らないことが大切
火災保険が使えなかったとき、多くの方が「何とか保険を使いたい」と焦ります。
しかし、焦りは判断ミスを生みます。
焦ると起きること
- 業者の「保険を通せます」という言葉を信じてしまう
- 虚偽申請に加担してしまう
- 不必要な工事まで契約してしまう
冷静になるためのポイント
① 保険はあくまで「手段の一つ」
保険が使えなくても、外壁塗装はできます。
保険が使えることが目的ではなく、家を守ることが目的です。
② 一人で判断しない
家族に相談してください。配偶者、子ども、兄弟姉妹、誰でも構いません。
「保険が下りなかったけど、どうすればいいと思う?」と聞くだけでも、
冷静な視点が加わります。
③ 時間をかけて判断する
外壁塗装は、数日で決断しなければいけないものではありません。
時間をかけて、納得のいく判断をしてください。
④ 複数の業者に相談する
一社だけの意見では、判断材料が不足します。複数の業者に相談し、
「本当に今、外壁塗装が必要か」「保険なしでどれくらいかかるか」を確認してください。
よくある質問
Q. 保険が下りなかったのに、業者が「私たちなら通せます」と言っています。信じていいですか?
A. 信じない方が安全です。一度保険会社が否認したものを、業者が「通せる」ということは、不正な方法を使う可能性が高いです。虚偽申請に加担すると、あなた自身が罪に問われます。
Q. 再調査を依頼したら、保険料が上がりますか?
A. 再調査を依頼しただけで保険料が上がることはありません。ただし、頻繁に申請を繰り返すと、次回更新時に影響する可能性はあります。
Q. 経年劣化と判断されましたが、どうしても納得できません。どうすればいいですか?
A. そんぽADRセンターに相談することができます。ただし、保険会社の判断が覆る可能性は高くありません。経年劣化であれば、保険の対象外というのが原則です。
Q. 保険が下りなかった場合、業者への相談料やキャンセル料は払わなければいけませんか?
A. 契約前であれば、通常は相談料やキャンセル料はかかりません。ただし、契約書にサインしている場合は、契約内容を確認してください。
Q. 保険申請を何度も繰り返すと、保険契約が解除されますか?
A. 正当な理由で申請している限り、解除されることはありません。ただし、虚偽申請が発覚した場合は、契約解除や刑事告訴の可能性があります。
まとめ|冷静に、正しい手順を踏むことが大切
火災保険が使えないと言われたときの対処法をまとめます。
まず確認すべきこと
- 否認理由を正確に理解する
- なぜ経年劣化と判断されたのか
- 損害額はいくらと査定されたのか
対処法
- 納得できなければ再調査を依頼する
- 異議申し立て(苦情申し立て)をする
- 新たな証拠を集めて再申請する
- そんぽADRセンターに相談する
やってはいけないこと
- 経年劣化を自然災害として再申請する
- 証拠を捏造する
- 業者に不正な申請を依頼する
保険が使えなかった場合の選択肢
- 自己資金で行う
- 助成金・補助金を利用する
- ローン・分割払いを利用する
- 工事を延期する
最後に|焦らず、一人で抱え込まず、冷静に判断してください
火災保険が使えないと言われたとき、多くの方が「何とかしなければ」と焦ります。
しかし、焦りは判断ミスを生みます。
大切なのは、冷静に、正しい手順を踏むことです。
- 否認理由を正確に理解する
- 納得できなければ再調査を依頼する
- 新たな証拠があれば再申請する
- それでも認められなければ、諦めることも選択肢
そして、一人で判断しないでください。保険会社に相談し、家族に相談し、
必要であれば複数の業者に意見を聞いてください。
特に、「保険を通せます」と言ってくる業者には注意が必要です。
虚偽申請は犯罪です。あなた自身が罪に問われる可能性があります。
保険が使えなくても、外壁塗装はできます。自己資金、助成金、ローンなど、
他の方法もあります。焦らず、時間をかけて、納得のいく判断をしてください。
高齢のご両親や祖父母が同様の状況にある場合は、必ず家族で情報を共有してください。
「保険が下りなかったから、業者に頼んで何とかしてもらおう」と考える前に、
家族で相談することが、トラブルを防ぐ最善の方法です。
この記事が、一人でも多くの方に届き、外壁塗装で後悔する人が減ることを、心から願っています。
正しい情報をもとに、納得のいく判断をしてください。
そして、不安なときは一人で抱え込まず、必ず誰かに相談してください。
あなたとご家族が、安心して外壁塗装を終えられることを願っています。


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